シーズとニーズの結合

 シーズとニーズの結合について興味深い提言があったので、引用する。京大教授の京藤倫久氏は、以下のように述べている。

★ マーケティング活動は,もはや研究開発部門のタスクの一部である

 新しい技術のマーケティング活動は,もはや研究開発部門のタスクの一部として行なわなければならなくなってきている。

 従来は、マーケティングと研究開発は、別々の部門にて取り組まれ、それぞれが連携して研究開発のロードマップを作成していた。しかし、これは時代遅れだという。

 市場から顧客の客観的な意見を入れながら,技術開発のロードマップをドンドン見直していかなければならない。
 

 マーケティング活動は,研究開発部門の中で行い、ニーズを迅速にかつ正確に汲み取り、成長性のある事業に育てなければならないという。

 質の高い人脈を広げ,有益な情報を収集するためには,開発した技術の使い方を研究者自らが考え,市場に開示して客観的な評価を受ける必要がある。また,将来の研究開発ロードマップを開示し,企業としての研究開発のベクトルを明確に示すことも重要である。顧客は,最先端の技術を利用して自社製品の付加価値を向上させようとしているのである。技術を提供する側が,将来技術の方向性を開示しない限り,顧客も利用方法を考えることができないし,技術について勉強することもできない。これまで日本の企業は,顧客の技術開発ロードマップに乗って技術を開発していた。しかし,これからは逆である。顧客の事業を支援するような技術を提案していかなければならない。

 「シーズをどのように情報発信してニーズに結びつけていくか」という点をIP戦略の中に組み入れていく必要があるとのことである。

 研究開発段階から行うマーケティング活動では,対象となる技術の客観的なベンチマーク結果や第三者の意見を織り込む必要があるのではないか。

 研究内容が事業性として成り立つかどうかという客観的評価を予めしておくのが望ましいということである。従来にも増して、研究開発の早期段階で事業性のチェックが必要であり、そのためには、研究者/開発者がマーケットに精通する必要がある。今後は、技術とマーケットの双方に精通しているマルチスペシャリストの育成が急務であるように思う。