AppleはなぜPowerPCとおさらばしたのか
Mac&PowerPCサーバユーザとして、何とも複雑な心境に陥る情報が流れてきた。既に各方面で情報が流れているのでご存知の方も多いと思うのだが、Macは、今後Intelのチップを搭載する方針になったようである。
アップル、IBMを見限る--Macにインテル製プロセッサを採用へ - CNET Japan
Appleは1994年以来IBMのPowerPCプロセッサを採用してきたが、今後は徐々にIntelチップへの移行を進めることになると、同社の状況に詳しい複数の情報筋が述べている。これらの情報筋によると、Appleはまず2006年なかばに、Mac MiniなどローエンドのコンピュータでIntelプロセッサへの切り替えを行い、Power Macなどハイエンドのモデルも2007年なかばには移行する予定だという。
ここで、思い出したのが、栗原潔さんの「PowerPCアーキテクチャがゲーム機を制覇した」というエントリである。
栗原潔のテクノロジー時評: 【雑談】次世代ゲーム機のCPUを全部押さえてしまったIBM
次世代ゲーム機のCPUを見てみると、
● 任天堂Revolutionは コード名「Broadway」(IBMと共同開発)
● マイクロソフトXBox 360はXenon(IBM製、PowerPC互換)
● Sony PS3はもちろんCell(IBM、東芝と共同開発)
ということで、IBMが3機種すべてを制覇してしまったと言うことですね!
このブログにもコメントしたのだが、PowerPCアーキテクチャは、オープン仕様であり、各社がIBM社とクロスライセンスを結ぶことにより、自社の独自の仕様を付加することが可能になっているため、ゲーム界の元締めとなってしまったと思われる。
IBM、Powerプロセッサの開発プロセスをオープンに - CNET Japan
IBMが、Linuxの開発手法に倣って、Powerプロセッサの設計プロセスのオープンにすると提案している。
IBMの今後の開発作業は、大規模な開発者のコミュニティが管理するLinuxオペレーティングシステムの開発プロセスからヒントを得たものになるが、しかし命令セットなど、Powerアーキテクチャの最も重要な部分については、今後もその多くをIBMが管理していくと、 Donofrioは説明した。
IBMは最近Powerチップの品揃え強化に取り組んでいるが、今回発表された計画は、この取り組みをさらに発展させたものといえる。たとえば、同社は顧客向けにチップを製造する委託生産プログラムを開始したり、PowerアーキテクチャのひとつであるPowerPCのプロセッサコアを、これまでより多くの企業に対してライセンス提供するようになっている。
IBM社は、数多くの提携先の力を借りて、新しい開発の取り組みを進める計画だとしている。提携先が産み出したアイデアを何らかの形で吸収する可能性が大きいという意味では、Apple社が要求した仕様がオープンになる可能性もあると共に、他社が要求した仕様が混入し、コモディティ化が進むことが予想される。
そういった点を考えると、Apple社は、以下の3点の理由で、PowerPCからIntelへ移行すると決定(?)したのではないだろうか。
(1) 自社の独自のノウハウが流出する可能性があるため
(2) PowerPCアーキテクチャがコモディティ化する可能性が高く、Macの独自性が失われる可能性が高いため
(3) PowerPCアーキテクチャの変革スピードが自社の製品ライフサイクルとアンマッチになる可能性が高いため
また、技術的には、PowerPCからIntelへの移行は実現する可能性は高いと見ている。オープンソースのPowerPCエミュレータPearPCは、x86で動作する実績が既にあり、x86上でエミュレータを使用せずダイレクトに動かすためのポーティング上、必要な情報は既に得ていると思われるからだ。
http://homepage3.nifty.com/toshi3/emu/pearpc1.html
PearPC - PowerPC Architecture Emulator