AppleはなぜPowerPCとおさらばしたのか-その2-

 以前のエントリで以下のように予想をしたのだが、3つのうち、1つだけは当たったようだ。

AppleはなぜPowerPCとおさらばしたのか - β. (Bee’s Blog)

 そういった点を考えると、Apple社は、以下の3点の理由で、PowerPCからIntelへ移行すると決定(?)したのではないだろうか。

(1) 自社の独自のノウハウが流出する可能性があるため

(2) PowerPCアーキテクチャコモディティ化する可能性が高く、Macの独自性が失われる可能性が高いため

(3) PowerPCアーキテクチャの変革スピードが自社の製品ライフサイクルとアンマッチになる可能性が高いため

 様々な憶測が飛び交ったが、Apple CEOのジョブ氏が言うには、クロック周波数が頭打ちになっていることと、発熱量がネックとなっていたようだ。
MacintoshへのIntel製CPU搭載をジョブズCEOが宣言

 Intel製CPU搭載にあたっては、PowerPC G5ではなかなか実現されない3GHzのクロック周波数や、発熱量の大きさから非現実的と言われているPowerBookへのPowerPC G5搭載を?マーク付きで例にあげて、1Wあたりのパフォーマンス効率がPowerPCよりも優れているという点を強調した。

 これは、技術的にネックとなっているのではなく、エコノミーの問題のようである。後藤弘茂さんの以下の記事がよくまとまっているので、引用する。
後藤弘茂のWeekly海外ニュース

 Macintoshもパーソナルコンピュータであるため、どうしてもPC(ここではWindows PCを指す)世界の影響を受ける。つまり、毎年性能を向上させ、CPUの機能も拡張し、新しいメモリ、新しいインターフェイス、新しいデバイスをサポートし続けなければならない。また、ソフトウェア資産の性能向上も、実現し続ける必要がある。それも、コストを一定水準に保ちながら。

 そのために、Appleは、自社のプラットフォームについて、中長期的な発展が約束されているCPUアーキテクチャ、毎年新技術をサポートし続けるチップセット、低コスト化のための市場ボリュームなど、それぞれを確保し続けなければならない。これが、PowerPCベースだと、非常に難しい。

 その背後には、IBMPowerPCの戦略変更にあるように思った。IBMは、ずっと前から、サーバ、ゲーム機、そして携帯端末をメインターゲットとして計画を打ち立てていたのでは無かろうか?PC業界は、コモディティ化しており、Appleのメーカーだけにしか供給できないマーケット市場から、あらゆる方面に供給できるマーケット市場にターゲットをおいたため、これまでのようにAppleに協力的な生産体制を打ち立てることができなかったのではないだろうか?

 もっとも、AppleIBM CPUで抱えていた問題のひとつは、明らかにノートPC向けのCPUだった。なぜ、IBMは、省電力技術に優れるのに、PowerPC G5互換でノートPC向けのもっと低消費電力のCPUが作れなかったのかという話になるが、それはエコノミーの問題なので別な話になる。

 IBMは、本気になれば、高クロックで低消費電力のCPUを作れる技術力は有るはずだと思うが、高コスト低マーケット性のため、見放した格好となったのではないだろうか?ApplePowerPCとおさらばしたというのは誤りで、IBMAppleとおさらばしたというのが正しいのではないだろうか?Appleもその点は、ぬかりなくずっと前から、Intelに移行する計画を立てていたようで、移行によるロスを最小限に抑える努力をしていたようだ。

 Mac OS Xについて「過去5年にわたって隠された歩みがあった」と、Mac OS XのすべてのリリースにおいてApple内部ではIntel対応版がコンパイルされ続けていたことを明かし、・・・

 IBM側も既にAppleが離脱することを想定していて、着々と準備はしていたようである。
IBM、Powerプロセッサ普及プログラムを強化 - ZDNet Japan

 しかしIBMは、Appleの離脱にショックを受けていないどころか、Powerに関する計画がいかに野心的であるかを宣言することで、Intelと決着をつける準備を整えた。同社のウェブサイトには、「オープンなチップ技術を普及させ、Power Architectureを圧倒的なシェアを持つ業界標準として確立することがIBMの戦略である」と記されている。