インターネット広告のイノベーション

 奥一穂氏が、インターネット広告について以下のエントリを書いていた。

「イノベーションのジレンマ」で読むインターネット広告 : Kazuho Oku's Weblog (跡地)

 コンテンツマッチ型広告技術が登場した当初、ダブルクリックの牙城は安泰のように思われた。AdSense / Overture は、従来、広告を表示するすべを持たなかった中小のウェブサイト向けのサービスであり、また、テキストのみであるという点で、バナー広告に見劣りしたからである。ダブルクリックは、ローエンドに進出するのではなく、より単価が高い、 Flash 等を利用するリッチメディア広告の拡大をもくろんでいた。
 しかし、しばらくすると、 AdSense でもバナー画像を配信できるようになり、また、上位市場である大手ウェブサイトも、これらコンテンツマッチ型の広告配信技術を採用しはじめた。
 一方、ダブルクリックが目論んだようには、リッチメディア広告市場は拡大しなかった。同社は身売りしてしまった。

 これは、「イノベーションのジレンマ」が言うところの、新市場型の破壊的技術がメインストリームをオーバーシュートしてしまった従来の支配的企業を破滅に追いやってしまう、生きた事例のように、私には感じられる。

 
 「イノベーションのジレンマ」の著者であるクリステンセン教授が言うところの破壊的技術とは、従来の技術に取って代わるようなイノベーティブで代替となる技術であって、AdSense / Overtureの技術は、これに該当しないように感じる。私は、この技術を熟知している訳ではないが、単にバナー画像に対応した(追随した)だけのように感じている。(もし、誤りであれば指摘していただければ幸いです。)それよりも、リッチメディア広告市場が拡大しなかった理由の方が重要に思う。その理由は、以下の通りではないかと思う。

(1) 当時は、ネットワークの帯域幅がブロードバンドに移行しきっておらず、ナローバンドのユーザーが依然として残っており、リッチメディア広告を表示するのに十分なネットワークインフラが整っていなかった。
  -> 外的要因の読み誤り
(2) インターネット広告に必要十分な機能を超えたテクノロジーをインプリしてしまったため、開発コストが回収額より上回ってしまった。
  -> ニーズ/シーズのアンマッチ

 以下、関連エントリ。
インターネット広告のひみつ - リッチメディア広告
http://hotwired.goo.ne.jp/news/business/story/20040309107.html