Web2.0の罠(その3)

前回のエントリでは、データ層が利益の源泉というようなことを書いた。

Web2.0の罠(その2) - β. (Bee’s Blog)

インターネットをビジネスモデルから、以下の3層モデルに分けてみます。
(1) アプリケーション層(Webアプリやブラウザなどで情報をどのように見せるか)
(2) ネットワーク層(ネットワーク構成により情報をどのように運ぶか)
(3) データ層(データをどのように蓄積するか、データからどのように情報を生み出すか)
これまでのWeb2.0は、(1)に重点が置かれて議論されていたが、
実は、(3)もあり、これがパラダイムシフトの重要なキーワードではないか。

ここで、私が(3)に拘っているのは、どんな立派なアプリケーションが有っても、データが無ければだたの箱だからだ。GoogleYouTubeなどデータ層を握っているところは、APIを公開して、データの使用頻度を高め、情報としての価値=利益の源泉を上げていくということだ。

先ほど、やっとGoogle Spreadsheetのinviteが使えるようになったので、使ってみた。
http://hjr.spreadsheets.google.com/

【基本的機能】
データ入力、ソート、計算が、それぞれタブ単位で行うことができるといったレベル。
また、今のところグラフ表示は出来ていないが、将来出来るようになるものと予想される。

【コラボレーション機能】
[ Share this spreadsheet ]という文字列をクリックすると[Invite people to Edit]・[Invite people to View]の欄が出てきてE-mailのアドレスを入れることで、共有が可能になるようだ。チャットしながらスケジュールを決めたりすることが出来そうだ。

【データ入力】
今のところ、データ入力は、クライアント側のファイルしかインポート対象になっていないが、インターネットのあちこちに転がっているデータも対象にするようになったら、凄いことになると思う。

【他サービスとの連携】
現在の所、他サービスとの連携は出来ないようだが、 Windowsで言うOLE【Object Linking and Embedding】のような機能は、Webアプリで容易に実装可能であると思うし、APIを提供すれば、サードベンダが色々なサービスを創り出すことも可能になると思う。
OLEとは|Object Linking and Embedding − 意味 / 定義 / 解説 / 説明 : IT用語辞典

中島聡さんも同じことを考えていたようだ。

http://blog.japan.cnet.com/nakajima/archives/002888.html

ウェブ上にあるリアルタイム・データ(例えば株価情報だとか、商品の実売価格だとか、電車の運賃だとか)を簡単に利用すれば、簡単に「自分の持っている株の時価」だとか、「日本一周に必要な電車賃の現在価格」などを計算することが出来るようになる(ちなみに、Google表計算サービスはまだ公開されていないので、これはあくまで「私がGoogleにいたとしたらこう作る」という話でしかないが、十中八九あたっているだろう)。

このアプリ自体が凄いことなのではなく、インターネットという巨大なリソースを自由自在に扱えるインターフェース・ビジネスモデルが凄いのだ。しかし、(1)アプリケーション層でのビジネスより、(3)データ層でのビジネスの方が、根っこを抑えているため、そちらの方へ目がいってしまう。

梅田さん風に言えば(笑)、全てをあちら側でデータをリンク・計算・編集することが可能になる。しかも、無料で出来るため、チープ革命(Cheap Revolution)が進むことになりそうですね。

マイクロソフトさん、やばくないですかね?対抗して、限定条件の下で(笑)ネット上で出来るアプリケーションサービスが出てくるような気がします。

Google Spreadsheetについては、以下のエントリが詳しいです。
「Google Spreadsheet」速攻レビュー - GIGAZINE

残念ながらというか当然というか、グラフ作成機能などはありません。本当に基本的な機能しかないので、どちらかというとCSVファイルを扱うのに特化した表計算ソフトのような印象を受けます。完全にExcelの代替となるわけではありませんが、数値入力程度であれば十分実用に耐えそうです。どこまでセル入力が可能なのか、巨大ファイルの扱いはどうなるのか分かりませんが……

[N] オンラインで表計算「Google Spreadsheet」

MicrosoftExcelのオンライン版とか提供するようになるんでしょうか。標準的なユーザであれば「Google Spreadsheet」で十分になってしまうかもしれませんね。ストレージもオンラインにある訳だし。

対応しているブラウザはInternet ExplorerIE)6またはFirefox 1.07以上ということで、Safariがありませんね‥‥。Firefoxを使った方が便利かな‥‥。

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以上のエントリを書いた後で、中島聡さんの前のエントリに気が付いた。
http://blog.japan.cnet.com/nakajima/archives/002886.html経由で、Life is beautiful: CTIA2006: IMSの本当の狙いのエントリが目にとまった。

 IMS関連の資料を丁寧に読むと、IMSの目指す本当の目的は、メッセンジャーだとかVoIPなどのようなサービスを通信事業者のサービスとして提供してしまおう、という所にあることが見えてくる。通信事業者にとっては、「ただのインターネットへの接続事業(dump pipe)」になりさがり、一番おいしい所を Yahoo、AOL、MicrosoftSkype に持っていかれることだけはなんとしてでも避けなければならない。そこで、「ネットワークへの接続」というレイヤーと「サービスの提供」というレイヤーを、通信事業者の持つ「通信品質」、「従来の電話網との接続」などの強みを生かして切っても切れないものにしてしまおう、という業界を挙げての大作戦の核になるのがIMSなのである。

(2)のネットワーク層の業者においても、アプリケーション層との融合がテーマになっているようである。

話が、それるが、最近ネット中立性(Net Neutrality)がホットな話題になっているが、どうも複数の層に跨ったビジネスを視野に入れたものであるような気がする。

ただのデータベース屋、ネットワーク屋、アプリケーション屋という時代は終焉を迎え、複数の層に跨った垂直構造のビジネスモデルがWeb2.0時代で生き残っていくすべではないだろうか?