情報社会学序説(第5章)

 第5章では、情報社会の新しい潮流について言及している。

 筆者は、スマートモブズについて以下のように表している。

 モバイルでパーベイシブな情報機器を巧みに使用し、そのさまざまな作用――善悪両面での――を受けたり及ぼしあったりする環境の中で生活するようになったという意味では、前時代の人びとよりも「スマート」である。つまりその意味では、彼らはある種の高い知力の持ち主、すなわち「智民」である。

 そのスマートモブズは、以下のようだとしている。

 私は、彼らこそが「共の原理」の担い手として、さまざまな「協力の技術」や「関係性の技術」を発達させ利用するなかで、自分たちの共同目標を実現しうるような、「群がりの知性(スウォーム・インテリジェンス)」と「集合行為」を通じた自己組織能力とをもった存在だと考える。彼らの思想や行動には、クレイトン・クリステンセンのいまやすっかり人口に膾炙した表現を借りれば、「破壊的イノベーション」が生み出した「破壊的技術」としての性格が強い。

 既存の技術とは、全く異なる斬新で新しい技術を生み出す能力が有るという意味では、確かに、「スマートモブズ」は、「破壊的イノベーション」としての性質を有していると言えるかも知れない。一方で、自己組織型のソフトウエア・ゲームに接する子供たちが、以下のように自我を確立していくのではないかといっている。

 「物的世界と精神的世界の中間に位置する」コンピューターに接した子供たちは、最初はコンピューターとは「何者」かと不思議がりながら、それは「生き物」、「ともだち」に違いないとまず判断し、次にコンピューター操作の習熟に熱中し、そしてコンピューターとの関わりを通じて自我をみつめ直し、自我を確立させていくのである。

 スマートモブズの子供時代は、このようなプロセスを得て、価値観などに影響を及ぼしたと言えるのかも知れない。コンピューターなどを駆使して、新しいアイデアや事業を生み出すことに長けているのかも知れない。このような変遷については、以下の複雑系の研究者であるスチュアート・カウフマンの言葉が、言い得ているような気がする。

 近著『探求(インベスティゲーション)』の中で、生命の進化の方向として「生物圏は、長いスパンでみたときの平均として、自律体や自律体が生活する方法の多様さが最大になるように構築されるのではないか。

 この表現を自分なりに解釈すると、年代が進めば進むほど、多様性が増大し、それに応じて人間のアイデンティティも多様化していくのではないかと思う。その中で、同じ目的を持った人たちが集まってコミュニティを形成していく、SNSのような人間同士をつなぐネットワークが今後は更に重要になっていくのではないかと考えている。

 総じて、自分のこれまで持っていた知識とリンクしているものが多く、大部分の内容において共感を持てた。(だから、エントリ自体自分の言葉に置き換えて表現しているという内容になってしまっているのだと思います)今後、更にこの分野で色々と研究をしていきたいと強く思うようになったきっかけを作ってくれた本であったと思います。この本は、情報社会学の序説というタイトルですが、大変内容が深くて全体を網羅しており、情報社会学の大系を十分に習得できる素晴らしい本だと考えいています。皆さんも是非一読をお勧めいたします。