次世代インターネット(IPv6)

 次世代インターネットのうち、IPv6に関する話題である。

次世代インターネットが一歩前進--北米でIPv6の大規模実験が終了

 IPv6として知られる次世代のインターネットが、北米での第2テスト段階を先週終了し、商業化に向けてまた一歩大きく前進した。

 IPv6は、現方式であるIPv4の運用のまずさから派生してきた面があるようである。RIETIの上席研究員の池田信夫氏は、以下の論文でこんなことを書いている。

IPv6 は必要か(RIETI Discussion Paper Series 池田 信夫)

 政府の「e-Japan重点計画」では、IPv6 (Internet Protocol version 6)の普及を促進することが政策目標に掲げられている。その理由として、現在のIPアドレス(v4)が間もなく枯渇するとされるが、この推定には多くの疑問がある。実際には、アドレスはまだ半分以上残っており、しかもインターネットに接続して使われているのは全体のわずか3%である。現状のままでも今後15年は枯渇することは考えられず、使われていないアドレスを有効利用すれば、ほぼ無期限に利用できよう。またv4でも事実上無限のアドレスが利用可能であり、絶対的に不足することはありえない。機能的にも、今のところIPv6でしか実現できない重要なアプリケーションはなく、v6がブロードバンド時代の課題に答える本質的な技術革新かどうかは疑わしい。したがって現在の段階でIPv6の商用化を急ぐ必要はなく、とりわけ政府がそれを性急に推進することはインターネットの健全な発展を阻害する。

 論文本文には以下のようなことが書いてある。

  ユーザーにv6 待望論があるのは、JPNIC の割り当てが官僚的で、将来の業務計画まで細かく干渉され、自由なアドレス利用ができないという原因が大きい。…。IP アドレスの「不足」は技術的な問題ではなく、第一義的には配分の効率性という経済学の問題なのである。…これから冷蔵庫や電子レンジがインターネットで結ばれる「ネット家電」になったら、それぞれにIP アドレスが必要だ、というのがe-Japan 計画の構想である。「v6 ブーム」が急速に広がったのも、出井伸之氏(ソニー会長)がこれを強力にサポートし、「ソニーの製品は今後すべてv6 対応にする」などと宣言したことが大きい。しかしネット家電にすべてアドレスが必要なら、今でもDHCP を使えばほぼ無限のプライベート・アドレスが利用可能である。要するに、v6 でしか実現できない決定的な「キラー・アプリケーション」はなく、v6 の意味は「NAT を使わない」ということしかないのである。

 IT革命が進展する事を前提としてこのような構想が進んでいるようだが、IT革命がいつまで続くか分からないので、本当にIPv6が必要なのか疑問である。池田氏は、運用方法を工夫さえすれば現方式でもどうにでもなると述べており、これは理論上は正しいと思うが、現実的には、恐らくかなりのエネルギーが要るのではと思われる。運用方法を工夫するには、様々なしがらみがあってスムーズには行かないのかもしれない。そういう意味では、IPv6への移行はリセットという意義があるのかもしれない。政府は、もう少し慎重な対応をしていただきたいと思う。現時点では、ビジネス機会の創出という点でしかメリットが見えないと思う。