ネットワーク上の破壊的イノベーション

 前回のエントリの続きです。マイクロソフトが、プロダクト重視から、サービス重視へと戦略大転換して来ていることを書きましたが、今回は、戦略大転換の背景を追ってみたいと考えています。

マイクロソフトの組織改編:ソフトウェアサービス重視でグーグルに対抗へ - CNET Japan

 Microsoftはソフトウェアの提供をやめようとしているわけではなく、その管理や保守といったユーザーの負担を軽くしようと考えている。(Helm)
「ユーザーにパッケージ製品を売りつけて、『複雑な製品だけれどもなんとか使いこなしてください』とエールを送るだけなどという商売は、もはや成立しない。製品のユーザーエクスペリエンスを向上させる方法を、考え出さなければならないのだ。製品の4年サイクルに縛られているようでは、顧客によりよいエクスペリエンスを提供できているとは言えない」(Gillett)

 これは、ユーザの求める機能が高度化してきており、ユーザ側にて運用するコストが上昇してきたため(overshooting)、プロダクト主体の形態では限界が生じ、メーカ側に運用を代行してもらった方がコストが廉価ですむということから、生まれてきたサービスと考えています。

 この転換は、ユーザの持つ価値観が変化しているのと関係していると思います。最近は、Web OSだのWeb2.0というキーワードがホットになっているように、Web上でGoogleのような検索を含め、様々なサービスが提供されるようになってきており、ネットワークが生活や仕事のインフラになってきて、価値観のパラダイムシフトが生じてきているようです。

 丁度、これに関連するエントリがあちこちで書かれているので、引用しつつ私の考えを書いてみようと思っている。パラダイムについては、satoshiさんが、以下のブログで書いているように、デジタルコンテンツの流通などに、変化が見られています。

Life is beautiful: 「ビットの集まりを売る時代」の次に来るもの

 映像、音楽、ゲーム、パソコンソフト、などさまざまなコンテンツをデジタルデータ(ビットの集まり)としてネットワークを介して流通することが可能になった現代において、「消費者のモラル」の低下を嘆く声や、不正コピーを防止する「DRM技術」の一層の進歩と標準化の必要性を訴える声をよく聞く。しかし、オープンソースクリエイティブコモンズの発想、丸山茂雄氏が立ち上げた247MUSICなどを見ていると、コンテンツを作る側としても、そろそろ少し発想を変えてもの作りをしなければいけない時代が来ているのでは、と思えてくる。

 デジタルコンテンツやサービスがネットワークというインフラの上で形成されているバリューチェーンの上で流通し始めており、その中で、消費者がメリットを最大限に享受できる方向に動いているということだと思います。これまでのような、既成の企業文化や企業一員としての価値観や法規制などでは、消費者がメリットを十分に受け取ることが出来ないため、これらを打ち壊すような方向へ動いていると思います。こういったバリューチェーンの中で「破壊的イノベーションが生じてきていると思います。

 しかし、こういった潮流にも抗うものが存在しており、梅田さんは、以下のように旧世代の存在を指摘しています。

情報の伝播の新しさと、それを苦々しく思う人たちの存在 - My Life Between Silicon Valley and Japan

 「一つ前の世代の仕事でいちばん優れた仕事をしていた人たち」は、「一つ前の世代の仕事に没入し、新しい世代について無知な人たち」だけを意味しておらず、一つ前の世代の組織において新事業やら新技術やらを担当し、「旧世代組織の中で、新しい世代について最も詳しいと認知され、信頼されている人たち」なんかも含まれるところが、問題をより難しくしています。

 これに絡めて、FPNの徳力さんは、以下のようにコメントしています。

Site Under Construction

 やっぱりネット時代においては、非公開を前提ではなく、公開されてしまうことを前提で、コンテンツやビジネスモデルを設計する必要があり、そうできる人が強い時代になるということかなぁと改めて思います。

 ビジネスの面でいえば、オープン指向であることが、結局顧客の価値を最大にすることが多く、これからはこの方向にシフトしていくように思います。オープンコミュニティなどのように、既存の枠組みである企業を超えた外へ開かれたバリューチェーンの繋がりをもち、Win-Winの関係を築いていけるかどうかが、ポイントであるように思いました。また、旧世代と新世代を如何にして共存させることが出来るかも、ポイントだと思いました。